ここは草原です

草原ではいろんなひとがいろんなことをおしゃべりします

アジュダ宮殿に行った。王朝、王族については全く詳しくないのだけど連れていかれるがままその華やかな屋敷をみてまわった。ブラガンサ王朝の最後の住まいだったらしいが、ほんものは1794年に火災で焼けてしまい現在の建物は19世紀初めに建設されたものらしい。全体はとにかく広いのだけど、一部屋一部屋はそこまででもなく生活空間くらいの広さのものを無限に繋げているかんじがしてふしぎだった。装飾が装飾と思えないくらいに設えられていて、絵画や壁一面に描けられた織物や彫刻がいろんな沈黙をしていた。これは再現されるときにもちろん誰かが変えたものかもしれないが、部屋の中で人の目線が自然に届かないような高い場所に、ぽつんと焼け野原になった場所を人や馬が歩いている絵画が掛けられていたり、食事をする部屋から廊下へ繋がる開口からとても大きな絵画(何かを収穫をする女たち、青々と育った植物と労働をするふくよかな女性が全く同じ存在として描かれているもの)がそのままそこにいるように掛けられていたりするのを見てわくわくした。絵の存在感が美術館とは全然違うと思った。それはわたしがここにかつて住んでいたであろう人たちに、少なからず何か自分とは違うものだという偏見があったからなのだろうか。それとも無意識にあこがれにちかいものがあるからなのだろうか全くわからないけど、もっと大きなもののなかに絵がおかれているような気がしてとてもうれしかった。日本語ガイドさんはここに住んでいた王女さまは淫乱で誰とでも関係をもったそうです、庭師なんかともだそうですと笑いながら言った。1階の中間くらいの場所に「冬の庭」と呼ばれるとても明るい外みたいな部屋があった。まんなかには噴水のような大理石の像がある。おおきな開口には鉄の細いフェンスが付けられ、ガラスでできた透き通った青や緑のぶどうが吊り下げられていた。それがつよい光に透かされてとてもきれいだった。その部屋にはおおきなお城の形をした鳥かごもあった。2018年のいま、そこに鳥はいない。水もない。そこでは誕生日パーティや夕食会をしたそう。部屋をあるいていくたびにいろんな顔がみえてくる。名前も顔も全然しらないひとたちの誕生日パーティ。その写真も絵もない。でも光はあって、ガラスのぶどうにすうっとあたっている。なにを見ているのだろう。